強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書)/神谷 秀樹
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たまには、トレンドを追ってみようと思って、手にしました。


リーマンショックとニュースで話題になっているけど、


実際に、投資銀行がどのようなビジネスをやっていて、


どのような仕組みで稼いでいるのか。


なんとくなく分かっているつもりで、具体的なところはほとんど知りませんでした。



著者は、アドバイザーからプレーヤーになった投資銀行の姿や、


事業に興味を持たず、金融収益をあげることに注力する、「強欲資本主義」を痛烈に批判しています。


収益を上げることというロジックのみを追い求めるのであれば、投資銀行は実に合理的なことをしていたのでしょう。


でも、彼らの最大のまちがいは「収益をあげること」という大前提が、正しいものではなかったということなのだと思います。


たぶん筆者の言いたいことは、血の通ったビジネスをせよ、ということなのだと思います。



ロジカルな側面だけでなく、精神的に成熟したビジネスを、自分はもっと深く掘り下げていかないとな、と考えさせられました



↓以下メモです。


・彼らは「その事業」に興味を持ち、「その事業」を行うために投資をするのではない。事業は何でもよい。「純粋に金融収益をあげること」「安く買って、高く売って儲けること」「お金がお金を生み出すこと」こそが、彼らの最終目的なのである。


・これまでの資本主義、そう「強欲化した資本主義」は一部の人たちが巨大な富を形成し、一方で大多数の人々が搾取される仕組みと化した。そうした「強欲の仕組み」が崩壊しつつある。当面、世界経済は縮小せざるを得ず、誰もが苦しい困難な時代を迎えよう。その後に、万人を幸福にする経済社会を築く仕組みをあらたに考え出さなければならない。


・BIS規制の対象になっていない投資銀行は、大きなバランスシートを獲得した。しかし、それは従来の、資本金を使わずに知恵と人脈で顧客にアドバイスをするという業務から、自らが投資家となって、市場を相手に最大収益をあげるための金融機関へと大変身させることになった。


・いまやゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーの顧客へのアドバイスによって上げる収益は、全体の1割程度にすぎなくなっているほどだ。


・あなたがバンカーに、あなたの会社の業界に関して、各社の強み、弱みを丁寧に説明したとする。そのバンカーが所属する投資銀行が、次の日、競合他社を買収し、突然競合者になってしまったら、あなたはどう感じるだろうか。二度と、業界の知識を披露しようとは思わないだろう。そうしたことが当たり前のように起こる時代になってしまったのである。


私は1人の投資銀行化として、顧客にサービスを提供することと、投資家として市場で行動することは並存しないと考えている。


・小さな会社を一生懸命に大きく育てるという、かつての投資銀行の精神はすでにない。彼らが欲しいのは、「今期、自分が儲けられる巨額の取引であって、「手塩にかけて育てる顧客」ではない。


・たとえば、コツコツとモノ作りに励む。そのことを忘れてしまったら、それはもう日本人ではないとさえ私は思う。会社は唯一株主だけのもの。株主のためだけに働く。こうした考え方も、日本の伝統的な価値観に反する。日本人に似合うのは「会社は皆の物」という考え方であり、しかもそれは正しい。


・世界の強欲資本主義者の考え方に迎合する必要がどこにあるだろう。むしろそれを拒絶することにこそ、日本の存在意義がある。私は日本の人たちに、世界のわずか5パーセント足らずの強欲資本主義者たちから、世界の95パーセントにも達する一般庶民を護る砦を築くことさえ期待したいのである。なぜなら、日本人の心の中には、いまだ利他の心や徳を重んずる高貴な精神が残っていると信ずるからである。


・強欲な投資銀行家たちがプレーするゲームの結末は、いつも同じである。最後に尻拭いさせられるのは、納税者に決まっているということだ。


・90年代以降の株式公開ブームでは、公開基準が徐々に引き下げられている。公開価格も通常の企業ならPERは15倍程度だが、話題性が高ければ株価は高騰し、すぐにPERは50倍、100倍になる。PER50倍は50年分の利益、100倍は100年分の利益に相当するので、50年、100年先の利益を先取りするという、常識では考えられないような株価になる。


・マネックス証券を創業した松本大さんは、その昔、ゴールドマン・サックスで働いていた。かつ、「パートナー」という株主に選ばれていた。彼はゴールドマンが株式公開を行う寸前に退職し、ソニーと一緒にマネックスを創業した。多くのマスコミは、なぜ大金をつかめる株式公開を待たずに退職したのかに関心を寄せた。彼は、その質問に対して「ゴールドマンの代々のパートナーと社員が努力して積み上げてきた資本を受け継いだ自分が、それを次の世代にそのままの形で渡すのではなく、今後何十年分かの利益に相当する価格で売ってしまうようなことをしては、今後自分が良い人生を過ごせるとは思わない」と答えた。


・松本さんは、株式公開益を、自分の懐に入れることを、自らの人生の選択として「潔し」としなかった。彼のこの判断と見識に、感銘する。


・アメリカのGDPの7割は個人消費である。しかも、その個人消費は借金でまかなわれており、ホーム・エクイティ・ローンやクレジットカードなど消費者金融に大いに頼っている。